型式番号:F9 / F90 (F-90)
宇宙世紀0102年、連邦軍の諮問機関であるサナリィは連邦政府にMSの小型化を提言、0105年11月に依頼を受けたアナハイム・エレクトロニクス (AE) 社が小型MSの開発に着手し、宇宙世紀0109年にその第1号であるヘビーガンがロールアウトする(ここまでの経緯の詳細はヘビーガンを参照)。ヘビーガン試作1号機の性能に不満を持ったサナリィは、連邦議会の承認を経てMSの自主開発を開始する。この小型MS開発計画は『F計画』と呼ばれる。
ヘビーガンの運用実績に一応の満足を得た連邦軍は、0111年に"ATMS (Advance Tactical Mobile Suit)" と呼ばれる次期主力MS開発計画においてさらなる高性能機の開発を要求する。その内容は「性能を落とすことなく調達容易な小型MSを作成せよ」というものであった。これに応じて提出された数社の開発提案の中から選ばれたのが、AE社のMSA-120と、サナリィの本機(当初の型式番号はF9)である。
サナリィの技術担当重役であるジョブ・ジョンのもとに結成された開発チームに、AE社や木星支社から招聘した技術者グループを加え、チーフ・デザイナーにアルマイア・グッゲンバイガーを据えたメンバーによって開発がおこなわれ、同年9月に1号機がロールアウトする。
10月にコンペティションがおこなわれ、1次審査の設計データをもとにしたコンピューター・シミュレーションでは、最大出力と対弾性ではMSA-120が勝るものの、運用コストや機動戦力比などではF9が上回り、総合性能でも高ポイントを獲得。そして2次審査のテストベッド同士による模擬戦においては、機動性の上回るF9が圧勝して審査官に大きな感銘を与え、選定される。なお、このときに当時完成していたミッションパックを使用しなかったのは、MS同士のドッグファイトにおいてはあらゆるデッドウェイトをそぎ落とした素体状態のF9こそが至高であるという戦術思想によるものであるといわれており、のちにこの思想を突き詰めたQタイプが完成している。
F9の採用によって約40年に渡るAE社のMS開発の独占は崩れる。しかし、性能的には満足いくものであるものの、主力MSとしてはいくつか不都合な点が散見されることから、連邦軍は実績のないサナリィの機体の量産は時期尚早と判断し、F9の改修およびデータ収集と評価試験の続行を命じる。これを受け、製作された2機の実験機はF9シリーズの0号機という意味でF90と呼ばれることとなる。
頭部はツイン・アイにV字アンテナなど、ガンダム・タイプの意匠を受け継いでおり、塗装もガンダム・タイプを踏襲したトリコロールを基調に塗り分けられている(2号機は時期により異なる)。