地球統合軍がVF-1 バルキリーの前段階として製造した試験機。のちに反統合同盟軍が自軍製VFであるSV-51を先に完成させた事態を受け、統合軍は急遽この試験機を改造したVF-0を30機ほど製造し、試験的実用部隊を編成した。このため、本機は試作機の中でも「先行量産型」に近い位置づけとみなされる。急な計画だったため、製作した試作機を運用現場である空母「アスカII」に運んだだけでなく、中島雷造技術主任などの開発技術者も同様に送り込み、微調整や不具合の改修、整備にあたらせた。
VF用の小型熱核反応タービンエンジンがまだ実用段階に達していなかったため、代用として従来型ジェットエンジンの中で最大級の推力を持つEGF-127ターボファンエンジンをオーバーチューンして搭載している。したがって、大気圏内での無補給飛行能力や大気圏外活動能力は有していない。また、限界まで出力を搾り出したため燃費が非常に悪いうえ、変形機構の都合で燃料搭載スペースが限られているため航続距離は1990年代末に実用化されたF-14後継機F/A-18Eの7割以下しかない。このため、作戦行動中は空中給油機の支援が不可欠となる。さらにVF用のアビオニクスが未完成であったため、操縦性にも難がある。メインノズルは推力偏向機能を有しており、コブラなどの変則マニューバもこなす。デリケートなエンジン、不慣れなバトロイド形態と相まって、その性能を充分に引き出せたのは、VF-X1のテストパイロットで実験部隊を率いた統合軍のエース・パイロットであるロイ・フォッカー少佐のみといわれている。
エンジン規模と燃料タンクに合わせ機体はVF-1(14.62メートル)よりも一回り大きくなり、2000年代初頭の主力戦闘機とほぼ同規模となったため、かなりの装備を既存の戦闘機用部品から流用することができた。そこにVF-1とほぼ同様の3段変形機構やレーザー砲などのオーバーテクノロジーが投入され、バトロイド形態では余剰出力を利用したSWAGエネルギー変換装甲により、部分的ながらも戦車並の強度を得ている。ただしファイター形態では基本的にエネルギー変換装甲が働いていないので、飛行速度がマッハ1.6以上になると変形できない。また、アクティブステルス“ASS/PS110”装置も備えている。後継機には採用されなかった独自の機能として、EGF-127の発電能力を活かすために機体に搭載された大容量エネルギーキャパシターへと、発電されたエネルギーをため込み、ファイター形態時にも短時間のエネルギー変換装甲を起動する「マイティウィング・モード」がある。本来は宇宙戦も想定していたため各部の気密性も高く、水面下20メートル程度までならばインテークを閉じた「サイレント・モード」で数分程度の水中行動が可能である。これらから、在来機と新世代機の中間に位置する過渡的な機体と形容される。
固定武装としてモニターカメラ兼銃座(バトロイドの頭部)にマウラー製レーザー機銃を装備(型式により搭載数は異なる)。標準武装として35ミリ3銃身のガトリング砲ガンポッドと空対空ミサイル12発(左右主翼下4つのハードポイントに各3発ずつ)を装備する。
追加兵装システムとして、ファイター形態時の機動性向上を目的としたFASTパック(スーパーパーツ)、バトロイド形態時の武装・装甲強化に特化したプロテクター・ウェポンシステム(通称「リアクティブアーマード」。リアクティブアーマーを利用した追加装甲パーツ)などが考案され、これらの装備は後継のVFシリーズにも受け継がれることとなった。
A型・S型のさらなる性能向上を目指したタイプ。攻撃・電子戦能力を強化したが、軍部の強い主張により複座型の機体を採用した。エンジン、基本武装はA型とほぼ共通だが、高機動用のカナード翼をエアインテーク上下に2対備え、主翼は「可変翼を廃し」、前縁後退角50度の、ドッグトゥースを持つ大面積クリップドデルタ翼を採用。その結果、原型と大きく異なる外観を持つに至った。ファイター形態時の最高速度はA型、S型より若干劣るものの、上昇力と空戦機動性ではこれを凌ぎ、航続距離も伸びている。
ただし、バトロイド形態時の運動性能は「主翼の収納形態の差」によってA型よりも低下し、格闘戦においてハンディとなる点も指摘された。空母アスカでは、主にF-14などの現用戦闘機から可変戦闘機に機種転換したパイロットたちの訓練機として位置づけられている。